粟国アーカイブス

狭い波止場に漁船が一隻停まっていました。
「ゆい丸」と書かれたその船は銀色に光る波の上をプカプカと浮いています。
港の防波堤には小学生の可愛い絵が大きく描かれていました。「Reach for stars」（素敵な言葉ですよね。）
男の子と女の子のにっこり笑った似顔絵に輝く星の絵。
私は車窓からそれらを眺めながら思わずこうつぶやきました。
「くるかもしれない。」
この気持ちになったのは本当に久しぶりでした。何がくるのかというとですね、「言葉」です。
私はちょうど新しい曲の歌詞を書いていたところで粟国島へ行く途中の船の中でも詩を考えていました。

私は歌手をしています。歌をうたうのが好きなのはもちろんなのですが歌詞を書くことが大好きなのです。
よくインタビューでは「いつもどのように歌詞を書くのですか。やはり降りてくるのですか！？」と聞かれます。
実際そう言いたいところなのですが、残念ながらそのような現象は本当に稀で私の場合は時間をかけて考えぬいて書くことが殆どです。

「いや、今日は降りてくる気がする！」

私は同行するスタッフのメンバーにそう話しかけました。撮影のため、車を降りて古民家の中を少し歩いていくと道端には栴檀草がたくさん咲いています。遠くからはエイサーの音、そしてしっとりとした風が私の髪をなでました。

あぁ、懐かしい。

そんなことをメモしました。そしてその日マハナ展望台で私は今まで生きてきた中で一番綺麗な夕日を見ました。
どうして大自然を目の前にすると大切な人を思い浮かべるのでしょう。

あの人に会いたい。
私は、「言葉」を失いました。
その「言葉」を失った瞬間に「言葉」が風のように通りすぎていきました。

会いたくなれば

海に続いた細い道
今日はひとりで歩いてく
何も変わらぬ海岸に
あなたの名前つけました

寝転んだ防波堤に
懐かしい風が吹く

会いたくなればここに来て
さびしくなれば星を見る
忘れないでしょうこの場所で
あなたとともに泣いたこと


潮の香りに誘われて
あなたのあとを歩いていく
遠く沈んでいく夕焼けに
あなたは少し立ち止まる

振り返る笑顔の向こう
銀色の海光る

会いたくなればここに来て
さびしくなれば星を見る
忘れないでしょうこの場所で
あなたとともに笑ったこと


海に続いた細い道
今日は一人で歩いてく
そっと瞳をとじたまま
あなたの名前呼びました

風の音通り過ぎて
新しい夏が来る

会いたくなればここに来て
さびしくなれば星を見る
忘れないよといつまでも
あなたの声が聞こえてる

最終日、観光協会内の壁に掛けてあった粟国村歌の歌詞がとても素敵だったので写メしました。

マハナ岬の　れいめいの　　　黒潮高く　うち寄せて
希望が朝を　呼ぶところ　　　新生の意気　はつらつと
いざ奮い立つ　粟国村　　誇ろうわれらがふるさとを （以下省略）

まさにそうでした。
粟国村のゆったりと流れる時間や穏やかな風景の中にも 大自然の躍動と そこに根付いた文化の力強さを 私は確かに感じました。
海岸で見た朝日は 昨日の夕日とは打って変わって　眩しくて光に飲み込まれてしまいそう。
心も体も真っ白になった気分です。
新しいふるさとに出会えた夢のような２日間、また粟国村に帰る日を心から楽しみにしています。