平成25年度粟国村村勢要覧

平成25年度粟国村村勢要覧 page 12/48

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概要:
平成25年度粟国村村勢要覧

大晦日の塩売りここの粟国の火ぬ神加那志(ひぬかんがなしー)は、大晦日の晩になると村に出て来てね、村中声を出して、「私達は、谷茶(たんちゃ)、仲泊(なかどぅまい)、次良(じらー)、三良(さんらー)ですが、今夜は、この粟国に火ぬ神加那志が塩を上げますよ」と言って歩いたからね。この火ぬ神加那志の神様が来ると、門で会った人が、こう言っているわけ。「谷茶、仲泊、次良、三良よ、私だよ。谷茶、仲泊、次良、三良、私だよ。こっち来なさい」と言って、門の中に入れているわけさ。そしたらこの人の言い分が、「麦加那志(むじがなしー)を作ったなら、馬の目の目玉のように、トーンチン加那志(がなしー)は、牛の持ち物のように、粟加那志(あわがなしー)は、おしどりの目玉のように作らせて下さい」との願いだったらしいさ。この火ぬ神加那志がこのようになさったらね、次の年からこの粟国は、大変麦ガラサーから唐じんから粟から良く出来ておるわけさ。「この人は本当の神様だったんだなぁ」とそれから信じるようになってるさ。だから、粟国では、今でも、この大晦日の晩には、太鼓打って踊ってねぇ、チャービラ、チャービラと言って、塩売りがくるでしょう。「御塩(うまーす)、売(う)やびら。火ぬ神加那志に差し上げなさいよ」と言って、そのとき、家の人からね、「お膳、お膳取っておいで」と言われて、私がお膳を取って来たら、マースヤーがお膳の上に塩を三ヵ所に三盛り置いているからね、「どうしてなの。」と私がその意味を聞いたわけさ。そしたら、家の人に、「これを大晦日の晩に差し上げるのは、この火ぬ神の道理なんだよ」と教えられてね、「こうして、火ぬ神にお願いしなさいよ」と言われましたよ。1大晦日の塩売り・・・現在も粟国島で行われている大晦日の塩売り行事。2火ぬ神加那志・・・火の神=竈神(かまどがみ)は、各家庭に祀られ、各家の家内安全や繁栄を祈願する神で、また、島全体が崇拝する火の神は、祝女が祈願を行う祝女殿内に祀られている。加那志は敬った言い方。3大晦日の晩・・・旧暦の大晦日の夕方、各字の各組みごとに青年達数名が塩を袋などに入れて持ち歩き、各家の屋敷に入って豊作を予祝する唱え言をする。4谷茶、仲泊・・・ともに国頭郡恩納村の字。5麦加那志を・・・今も行われる唱え言の一節。作物を予祝する言葉である。麦加那志は、麦を敬った言い方。6トーンチン・・・タカキビ(モロコシ)7チャービラ・・・ごめんください。8売やびら・・・売りましょう。9マースヤー・・・塩売り。ここでは塩売りに扮装した青年のこと。その中から代表的な二つの民話を紹介します。粟国村には数多くの民話が語り継がれています。10